古来より私たちは月を仰ぎ、崇めてきました。しかし、宇宙生物学の立場からは、星間雲、惑星、衛星などと比べて、月は生命の痕跡のない無機的な岩石だと言われています*1。「月はたんなる石ころにすぎない」という事実によって、我々の月の見方は変わるのでしょうか。それとも、各地でみられる石信仰のように、たんなる石ころが信仰の対象となり得るのでしょうか。本作品では、地上6階の窓に天体を思わせる巨大な石の写真を設置し、会場内には、実際に撮影した石を展示しました。写真は屋外からしか鑑賞することができないため、鑑賞者は、必然的に地上から見上げるようにして作品を鑑賞することとなりました。*2
*1 石川洋二「月はたんなる石ころにすぎない」『MACRO REVIEW』Vol.2, No.1, 1989, pp.53-56.